2004.9月の記事

09 28 2004

スウィングとクラブの重量の関係**前編

クラブの重量が、スウィングに与える影響を考えてみましょう。

皆さんのゴルフ仲間の中に、野球やソフトボールの経験者で、ロングヒッターがいると思います。中には、それほど大きな体格の持ち主ではないのに、かなりの飛ばし屋がいると思いますが、なぜ、小さな体でボールを遠くに飛ばせるのでしょうか。

基本的に、小さな体で大きな「力」を発揮することは難しいのです。人間の体は、筋肉の収縮によって動かされますが、筋肉から生みださえる「力」は、筋肉の断面積に概ね比例しているので、体の小さい(または体重の少ない)人の筋肉量は多くありません。しかし、小さな体で遠くに飛ばす人もいれば、大きな体でもあまり飛ばない人もいるので、どうしてそうなるかを説明します。最初に、スポーツ科学で使われる「運動量」の意味を書いておきます。

運動量 = 重さ × スピード

金槌で釘を打った経験は、殆どの方があるでしょう。しかし、どうして金槌が釘に当たる瞬間に、腕を止めるのでしょうか?金槌を振り下ろすと、腕にも、金槌にも運動量が発生していますが、金槌が釘に当たる瞬間に腕を止めると、腕に生じていた運動量が、まだ運動を続けている金槌のほうに移行するので、金槌のスピードが増加し、釘がしっかり打てるのです。ハンマー投げでも同じで、回転している体を、ハンマーをリリースする瞬間に、下半身の動きを止めることにより、下半身の運動量が上半身に移行して、ハンマーのスピードが高まるのです。室伏選手が、ハンマーを投げた瞬間に、両足がきれいに揃っているのはそのためです。

ゴルフで、飛距離を伸ばすスウィングとは、下半身からダウンスウィングが始まり、下半身の動きに引っ張られるように上半身が動くことです。体の中心部分を最初に動かすことにより、大きな運動量を生じさせ、それがやがて、腕およびクラブヘッドの方へ移行していきます。インパクトの瞬間に、「足をしっかり踏ん張る」と言いますが、これは体の動きをスローダウンさせることにより、下半身で生まれた大きな運動量を、腕から最後は、クラブヘッドに移行させることです。金槌を、釘に当たる瞬間に止めることと、同じ動作です。タイガー・ウッズのデビュー当時のデータでは、インパクトエリアでの、腕の移動スピードは、トッププレーヤーの中で、一番遅いという結果が出ていました。ですから、あれだけの飛距離が出ていたのでしょう。今は、インパクトでの腕のスピードは、以前より速くなっているでしょう。デビュー当時より、上半身に頼ったスウィングになっていますから。

重量の軽いクラブを使用していると、腕の振りに頼ったスウィングになりやすく、飛距離の低下につながります。このことは、次回に詳しくご説明します。

No,0014

09 18 2004

毎年出る新製品について

各メーカーから、年度が変わるとカタログが新しくなり、いろいろな新製品が出てきます。そして、宣伝文句は、消費者の心をくすぐるべく、「かつてない飛び!」など、コピーもどんどん新しいものが登場します。

売る側の戦略として、「今までの製品を陳腐化させて、新製品を売り込む」というのがあります。ゴルフ業界に限らず、どこの業界にもあることなのですが、たとえば、軟鉄鍛造のアイアンヘッドの裏に、ひし形のようなくぼみがいっぱい施されていても、見た目には新鮮さを感じるでしょうが、ボールを打つことに関すれば、まったく影響はないと思います。

より良い機能を持ったゴルフクラブを作ることは容易ではなく、新製品とし発表しなくてはならない状況になれば、やはり、形や色を変えたほうが、当然のことながら簡単でしょう。そうなると、クラブを開発する人間にとっては、新製品として世に送り出すことが優先され、時間がかかっても本当に良いものを作るという姿勢を、持ち続けることは難しくなるかもしれません。最近、日本のメーカーから発売される製品の中で、「情熱」を感じるものが、きわめて少ないと思っているのは、私だけではないでしょう。

特にこの10年以上にわたって、日本経済はあまり良い状態ではないので、とにかく売らなければ、という追い込まれた状況にあることは否定できません。でも、それが、新製品を早く作らなければ、というあせりから、悪循環に陥っているような気がします。

成長著しい経済には、製品を陳腐化させて、どんどん新製品を投入する戦略は、効果的かもしれませんが、日本のように成熟した経済には、製品のライフサイクルを長くして、よい物を、腰をすえてじっくり売るスタイルのほうが、私はあっているのかなと感じています。ですから、弊社の「スライダー」を、根気よく売り続けていこうと思っています。

No,0013

09 08 2004

私の経歴 5

今回も、ヒューストンオープンでの話題です。3人のプレーヤーについて語ります。

最初は、コーリー・ペイビンについてです。私は、1994年にアマチュアとして東海クラシックトーナメントに出場しましたが、その時の招待選手として彼が参加してました。前夜祭の会場で、私が彼に握手を求めながら「あなたと同じトーナメントに出ることができ、非常に幸せです」と言うようなことを話したとき、彼はすごく丁寧に応対してくれました。そして、少し驚いたのが、彼の体の細さでした。アメリカで、賞金王を取るほどの選手なので、もう少しガッチリした体格の持ち主だと、勝手に想像していたからです。

今回、Woodlakeという町のホテルに滞在したのですが、そのホテルは選手が滞在するホテルの1つで、コーリー・ペイビンもそのホテルにいました。朝、フロントの近くで彼がいたので、昔日本であなたと握手をしたというような話をしたら、以前と同じように、紳士的な応対でした。ただ、前と比べたら、髪が随分白くなったのと、体格が以前よりよくなっている、という印象を受けました。ドライビングレンジで、長い時間、真剣に練習している姿を見て、彼はまたカムバックしてくると感じました。

次にジョン・デーリーです。初めて彼のプレーを見たのですが、才能の豊かさに圧倒されました。まず、弾道の高さは、本当に信じられないくらいです。それでいて、ものすごい飛距離が出るし、また、グリーン周りでのタッチのソフトさは素晴らしいものがありました。本当に集中してプレーしているし、練習でも真剣そのものでした。その時、また復活するだろうと感じていましたので、今年の春のトーナメントで優勝したときは、あのときの真剣さから見れば当然だろうな、と思っていました。練習したから、すぐに結果が出るということはありませんが、努力はやがて身を結ぶということを、彼を見ていて再確認できたような気がします。

最後にマーク・ブルックスです。彼を知らない方も多いでしょうから、簡単に戦歴を紹介すると、1996年に全米プロ選手権に勝っており、その年は3勝して、賞金ランキングは6位でした。そのころは、よくトーナメントの上位のほうに食い込んでいましたが、最近は、あまりテレビでも見かけません。体格は、コーリー・ペイビンと同じぐらいで、あまり大きくありません。私がヒューストンを訪れたときは、彼の調子はあまりよくなく、試合の直前までアイアンのロフト角やライ角を調整していました。試合直前まで、使用するクラブを迷ったり、シャフトを変えたり、ロフト、ライ角などを調整しているプロで、その週の試合によい結果を出した選手をあまり見かけたことはありません。スウィングの迷いが、そうさせているのではないかと私は思います。

ただ、今回のヒューストンオープンでは、マーク・ブルックス選手には、いろいろ世話になりましたし、ゴルフクラブの機能の話になったときは、本当によく知っていました。私の英語力が十分ではないため、彼の話をよく理解できなかったので残念でしたが、彼のおかげでいい思い出となりました。

No,0012