2007.11月の記事

11 24 2007

温故知新***4

dscn0265.JPG 今回はジャック・ニクラウスの言葉を紹介します。殆どの人は、彼の名前を知っていると思いますが、メジャータイトル通算で18回獲っている最高のゴルファーでしょう。しかし、彼の功績はタイトルの数だけではなく、写真にあるソフトスパイクは、彼の提唱により実現されました。以前の金属のスパイクでは、早い時間でプレーする人と、遅い時間でスタートした人では、グリーンの状態に随分と差がありました。金属のスパイクが、グリーンの表面に小さな穴を開け、時間がたてば立つほどグリーンのコンディションは、最初に比べれば悪くなってきます。

ジャック・ニクラウスは、競技を出来る限り公平に行うためにグリーンを傷つけにくいスパイクの使用を長い間提唱していました。彼は、自分のプレーだけでなく、ゴルフ界全体の発展のために、色々発言をして、そして行動をしてきた素晴らしい人物です。

「ゴルフに関するすべてのことは、ナチュラルでなければならない。」   ジャック・ニクラウス 

「ゴルフに関するすべて、、、」は範囲が広いですので、ここではスウィングだけに焦点を合わせて考えてみたいと思います。「ナチュラル」ということは、人為的に何かを行ってはいけないということなのでしょう。テークバックを30Cmだけまっすぐ引け、とか、トップオブスウィングでは右手が出前持ちのような格好になれとか、そういうものを意識的に作ってはいけないんだよ、とニクラウスは言っているのだと私は解釈しています。

女子プロの横峰さくら選手や、アメリカのジョン・デーリー選手は、トップオブスウィイングで大きく右脇が開きますが、彼らに出前持ちをさせたら、間違いなくお盆の上に乗っているラーメンや丼はこぼれてしまうでしょう。彼らはプロゴルファーとして成功しているのですから、トップオブスウィングで右ひじの格好が「出前持ち」でなければならないとは、必ずしも正しいとは言えません。

私の2年に及ぶ大スランプで気づいたことの1つに、クラブを通してボールに力をかけるのと、クラブを速く振るのはまったく別の動作であるということです。 クラブを速く振るのも、クラブを使ってボールに力を加えるのも同じではないか、と感じられる人も多いと思いますが、これは全然違うのです。よく引き合いに出しますが、腕相撲を考えて見ましょう。腕相撲をする場合、腕を早く動かして相手を負かそうとするのか、それとも腕を固定して、自分の全体重を相手に加えようとするのか、議論するまでもなく後者です。これが「ナチュラル」な動きです。

ゴルフスウィングも全く同様で、ボールに力を加えようとする動きが、ボールに最大限のエネルギーを加えられるの最高の方法だと思います。クラブを速く振ろうとすると、殆どの場合クラブを持っている腕を速く振ろうとします。「腕を振る」という動作を考えてみると、腕自体の重さ(質量)は大きくなく、腕を思いっきり振ってもあまり大きなパワーは発揮できません。また、腕を強く振ると顔が動きやすく、目線がぶれるので芯で打つことが難しくなり、ミスショットの確率が大きくなります。

反対に、「ボールに力を加える」という動作では、インパクトまで目はボールを見ているはずです。金槌で釘を打つとき、当たる瞬間に釘から目をそらす人はいないでしょう。「ボールに力を加える」という動作を徹底すれば、「ヘッドアップをするな」というアドバイスは不要となります。また、インパクトでボールに集中する、そのためにボールをしっかり目で捉えるために、上半身を「静かに」使おうとします。この「静かに」という動きが、下半身をより積極的に使って、大きなパワーをボールに伝えてくれるのです。

こういう説明をすると、難しいことを言っているようですが、生まれて初めてクラブを振る人は、多くの場合今言ったような動きをします。やや伸び上がりながらゆっくりバックスウィングをとり、体全体でスウィングしようとしています。これがジャック・ニクラウスの言っている「ナチュラル」な動きではないでしょうか。「ナチュラル」な動きとは、クラブを速く振ろうとする動きではなく、「ボール」に力を加えようとする動きだと私は思います。

11 06 2007

温故知新***3

dscn0263.JPG写真は、私のショップで使っているショットの分析器で、ヘッドスピード、ボールの初速、ボールの打ち出し角度、スライス、フックのスピン量などが測れます。狭い室内でも、弾道はある程度予測できますので、クラブとその人はがマッチしているかを診断するには都合のよい器械です。

この測定器で、1時間以上ボールを打ち続けている人が時々いますが、その人はいったい何を測定しているのでしょうか。殆どの場合、ヘッドスピードでしょう。その人が打っている姿を見れば、容易に判断できます。ものすごく力んだ顔をして、ボールを打っていますから。そして、そのボールを打ち続けている人に、「調子はどうですか」と聞くと、「だんだん疲れてきて、ヘッドスピードが落ちてきました」という答えが返ってくることが多いのですが、疲れることは確かあるけれど、スピードの落ちた原因は「力み」です。力めば力むほど、筋肉はゆっくりしか動いてくれません。

 「ボールを遠くに飛ばしたければ、インパクトをゆっくりしろ」    サム・スニード

サム・スニードは1912年生まれのアメリカのトッププロで、全米オープン以外のタイトルを殆ど掌中にした歴史に残る名ゴルファーです。

彼のいった言葉は、簡単に理解できるものではないかもしれません。当たり前のことですが、 「インパクトをゆっくしろ」とはクラブヘッドの動きをゆっくりすることではありません。 ボールの飛距離は、初速、ボールの打ち出し角度、スピン量で決まりますので、ボールの初速が遅ければ遠くに飛ぶことはありません。彼の言っている「ゆっくり」とは、インパクトエリアでの体の動き、特に腕の動きを「ゆっくり」しろ、といっているのではないかと思います。

金槌で釘を打つとき、金槌の頭の部分が釘に当たる直前で腕の動きにブレーキをかけますが、それは腕に発生している運動量(重さ×スピード)が、金槌の方に移行して、金槌の頭の部分が加速されて釘が打ちやすくなります。ゴルフのスウィングも全く同じで、インパクトの直前で、クラブを持っている腕や体の動きのスピードが抑えられると、クラブヘッドが加速されるという現象が生じます。

ただ人間は、ヘッドスピードを上げようとすると、クラブを持っている腕を速く振ろうとする傾向がかなり強いようです。私自身も、3年近く前に「いい球」を打つためにヘッドスピードを上げる練習を始めました。体を軟らかく使って、下半身のリードでボールを打つことでした。練習を始めて7,8ヶ月たってから初めてヘッドスピードを計ったら、自分の予想を越えるスピードが出て、そのうちにもっとスピードが出るのではないかと思って練習を続けているうちに、知らず知らずのうちに腕に力を入れて振っていたのです。そこから、2年以上にわたる大スランプが始まったのです。

力を抜いてクラブを振ることを念頭に置いて練習を始めた人間が、もっとヘッドスピードを上げようとした瞬間に、腕に力を入れて腕でクラブを速く振ろうとしたのです。サム・スニードは自分の経験から、飛ばそうと思えば腕に力が入ってしまうので、「インパクトをゆっくり」という表現で、腕の動きを早くしないようにしたのでしょう。そして「インパクトをゆっくり」して、ロングドライブを放っていたのでしょう。スポーツは感覚的にするものですから、昔の名手の言葉を理解することによって、技術の本質をつかめるように思います。